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「製造販売業者及び製造業者の法令遵守に関するガイドライン(案)」に関するパブリックコメントの発出

『「製造販売業者及び製造業者の法令遵守に関するガイドライン(案)」(以下、「ガイドライン案」)に関する御意見の募集について』と題するパブリックコメントが8/11付で発出されました。

パブリックコメントの募集概要は以下です:

意見募集対象:「製造販売業者及び製造業者の法令遵守に関するガイドライン(案)」

募集期間:令和2年8月11日(火)~9月9日(水)

策定予定:令和3年1月

URL:https://search.e-gov.go.jp/servlet/Public?CLASSNAME=PCMMSTDETAIL&id=495200176&Mode=0

ガイドライン(案)の概要

改正薬機法では、薬機法による法規制を受ける業者(医薬品、医薬部外品、化粧品、医療機器及び再生医療等製品(以下、医薬品等)を、許可を受けて製造販売・製造・輸入・販売等を行う者(以下、許可等事業者))に対して以下を求めています。

  • 法令遵守体制の構築
  • 薬事に関する業務に責任を有する役員(以下、責任役員)の選任
  • 技術責任者の選任
  • 技術責任者の意見の尊重および必要な措置を講じること

本ガイドライン案は医薬品等の許可等事業者のうち、製造販売業者および製造業者が法令遵守体制を構築するための取り組みを検討し、実施するための指針を示すものです。

本ガイドライン案は大きく分けて主に2つの事項について述べています

  1. 薬機法令体制の構築
  2. 責任役員や総括製造販売責任者等の役職者の権限の明確化、権限の付与、申述された意見の尊重、改善措置の実施

上記1、2で求められていることの概要は以下です(詳細に関してはガイドライン案本文をご参照ください):

1.薬機法令遵守のための体制の構築

社内規程の作成、役職員等への教育、業務記録の作成、役職員の業務遂行状況の管理監督のための仕組みの構築等

2. 責任役員や総括製造販売責任者等の役職者の権限の明確化、権限の付与、申述された意見の尊重、改善措置の実施

薬機法令の遵守に責任を負う役員や総括製造販売責任者等の薬機法令が求める責任者を選任すること、当該役職者の権限および範囲を明確化すること、必要な権限を付与すること、当該役職者から申述される意見を尊重し、必要に応じて改善措置を講じること

ガイドライン案の目次

ガイドライン案の目次

第1 基本的考え方
1 許可等業者の責務
2 法令違反の発生と法令遵守に向けた課題
3 薬機法が求める法令順守体制

第2 製造販売業者等の法令遵守体制(法第18条の2、第23条の2の15の2、第23条の35の2関係)
1 法令順守体制の整備についての考え方
2 製造販売業者等の業務の適正を確保するための体制の整備
3 総括製造販売責任者等が有する権限を明らかにすること
4 GQP省令等を遵守するための措置
5 その他の製造販売業者などの業務の適正な遂行に必要な措置

第3 薬事に関する業務に責任を有する役員(法第12条第2項第2号、第13条第3項第3号、第23条の2第2項第2号、第23条の2の3第2項第3号、 第23条の20第2項第2号、第23条の22第3項3号関係)
1 責任役員の意義
2 責任役員の範囲

第4 総括製造販売責任者等(法第17条、第18条、第23条の2の14、第23条の2の 15、第23条の34、第23条の35関係)
1 総括製造販売責任者等の選任
2 総括製造販売責任者等による意見申述義務
3 製造販売業者等による総括製造販売責任者等の意見尊重及び措置義務

製造販売業者等が今後実施すべき事項

ガイドライン案では、改正法遵守のための取り組みとして実施すべき事項を示しています。ガイドライン案の示す事項を要約した内容を以下に示します。

ガイドライン案では節をまたいで重複する内容の記載がありますので、本記事では分かりやすさを優先し、重複を省いて記載するようにしております。

ガイドライン案に従って社内体制等の構築をされる際には必ず本文をご参照くださいますよう、お願い申し上げます。

1. 薬機法令遵守のための体制の構築

製造販売業者等の業務の遂行が法令に適合することを確保するための体制を整備するための実施事項として以下が示されています:

① 法令遵守体制の基礎の構築

  • 法令遵守体制の基礎としてすべての役職員に法令遵守規範を根付かせるべく、以下を実施すること:
    • 法令順守のための指針を従業員に対して示すこと
    • 各責任役員の権限や責任範囲を明確にすること

②役職員が遵守すべき規範の策定

製造販売業者等の役職員が遵守すべき規範を、社内規程において明確に定める必要があります。

当該規程には以下を含み、明確化する必要があります:

《意思決定の仕組み》

  • 意思決定を行う権限を有する者および当該権限の範囲
  • 意思決定に必要な判断基準
  • 意思決定に至る社内手続き 
    等 

《意思決定に従い各役職員が適正に業務を遂行するための仕組み》

  • 指揮命令権限を有する者
  • 当該権限の範囲および指揮命令の方法
  • 業務の手順

③役職員に対する教育訓練および評価

②で策定した社内規程の内容を役職員に周知し、その遵守を徹底する必要があります。

その方法として以下が示されています:

  • 役職員に対して計画的・継続的な教育訓練等を実施する
  • 法令等や社内規程の内容や適用等について役職員が相談できる部署・窓口を設置する
  • 役職員による法令等や社内規程の理解やその遵守状況を確認・評価する

④業務記録の作成、管理および保存

業務内容を適時に正確に記録する体制を整える必要があります。

その方法として以下が示されています:

  • 業務記録の作成、管理および保存の方法などの文書管理に関する社内規程を定めること
  • 事後的に記録の改変ができないシステムにすること

⑤ 役職員の業務の監督に係る体制の構築

役職員が法令を遵守し、適切に意思決定および業務遂行をすることをモニタリングし、必要に応じて責任役員に報告したり、必要な改善措置を講じることができる体制を構築するための方策として、以下が示されています:

  • 内部監査の実施および発見した問題等の責任役員への報告
  • 実効性のある内部通報制度の構築
  • 監査役等による監査の実効性の確保
  • 総括製造販売責任者等による業務の監督や、意見の具申が適切に行われる体制の構築

⑥その他の体制

上記以外に、法令順守体制の構築を目的として以下が示されています:

  • コンプライアンス担当責任役員の指名
  • 各部署にコンプライアンス担当者を設置

2. 責任役員や総括製造販売責任者等の役職者の権限の明確化、権限の付与、申述された意見の尊重、改善措置の実施

改正薬機法では薬事に関する業務に責任を有する役員の選任が求められています。

責任役員は株式会社の場合は会社を代表する取締役および薬事に関する法令に関する業務を担当する取締役がそれにあたります。

製造販売業者等は責任役員の権限および分掌する業務を明らかにする必要があります。

また、責任役員は以下の責務を負っています

  • 法令順守体制の構築および運用を行う
  • 法令違反について責任を負う

本ガイドライン案ではまた、総括製造販売責任者等に関して、以下の事項が求められています:

  • 製造販売業者における総括製造販売責任者が有する権限を明らかにすること
  • 製造業者における製造管理者または責任技術者の有する権限を明らかにすること
  • 総括製造販売責任者およびその他の責任者が適正に業務を遂行できるよう必要な権限を付与すること
  • 総括製造販売責任者の選任にあたっては、権限に係る業務を行うことができる知識、経験、理解力、及び判断力を有することを客観的に判断すること。また、責任役員に対して忌憚なく意見を述べることができる職務上の位置づけを有するかどうかについても十分に考慮すること
  • 総括製造販売責任者が認識した問題点について、製造販売業者等に対して書面によって(緊急の場合は除く)意見申述を行うこと
  • 総括製造販売責任者およびその他の責任者が付与された権限を適正に行使し、業務を遂行していることを監督し、必要に応じて改善措置を講じること

その他、今般の薬機法改正の際に検討がなされた過去の薬機法令違反を踏まえ、以下が求められています:

  • 承認書の内容と齟齬する医薬品等の製造販売が行われないための措置を講じること
  • 副作用等報告が適正に行われるための措置を講じること
  • 医薬品等に関する適正な情報提供が行われるための措置を講じること